帝国データバンクの企業文化

▮ 100年以上歴史と高い知名度


時々「帝国データ―バンク」と間違えられるが、社名は「株式会社帝国データバンク」で、通称「TDB」。100年を超える業歴があり、「帝国データバンク」の名前を出せば、8割の確率で企業経営者や幹部と直接アポイントがとれる。近年の業績も緩やかながら上昇傾向にあり、信用調査会社としては圧倒的なブランド力を有する。業界No1のシェアを築いてきた歴史と信用力、知名度は格別に高い。また、業務遂行に必要なノウハウは豊富であり、社員教育制度もしっかり整っているほか、採用大学のすそ野は広く、優秀な大学を卒業した新卒社員を多く採用できる企業。

一方、調査営業を始め、各部門では決まったノウハウからの逸脱は許されない固い環境もある。また、無名の時代から業界の地位や歴史を築いてきた役員達の功績を重んじる精神が強く、もう現在では陳腐化してしまった過去の商品の改善は進まないことが多い。


▮ ミスを許さない文化


基本的に全ての管理が性悪説から構築されており、ミスを許さない文化。背景としては、大手企業の与信管理に組み込まれ、社会的に必要な機関となっている為で、とにかく安定的に問題を起こさず長く運営することを大事にしている。その為、社員に対しては、駒のような扱いで細かく管理し、トラブルを起こすとバッサリ切り捨てる。また、営業数字を達成しても課の数字をやらなければならず、課が達成しても部、部が達成しても支社という形で、達成する喜びが得られにくく、恐怖政治を敷くことで社員をとにかく働かせる仕組みとしている。

上下関係では体育会系の風土があり、特に調査部ではそれが顕著に表れている。ただし、それには良い意味と悪い意味の両面があり、良い点はしっかりと先輩から指導を受けることが出来るので仕事面での不安はあまり存在しないということ。悪い面はノルマに対するプレッシャーが「気合い」によって解決される雰囲気が全体的に蔓延していること。成績の良くない社員への恫喝などが頻繁に起こっており、これが原因でメンタルを病んでしまう社員も多く、ブラック企業の一面も持っている。

▮ 調査営業の実態


本来は、「企業情報」を扱う会社となる。例えば、企業の取引状況や決裁状況等をヒアリング調査し、関係各所からその裏付けを取り、それをレポートとしてまとめることが調査業務となる。一方、そのレポートを調査対象企業に販売する営業も同時に求められる。調査業務(中立的な立場が求められる)とともに、営業業務(お願いベース)を同時に行うこととなるが、実際のところは、営業業務の比重が高いため、調査業務は疎かになる。これが、帝国データバンクの調査営業である。新卒、中途ともに、多くの者が「調査業務」に魅力を感じて入社しているため、日々の営業業務とのミスマッチが生じている。

調査営業では営業実績が最優先され、学閥などはない。外勤(調査営業職)で数字を挙げた人間が優秀であり、結果だけが優先される。若い時代に営業成績のよかった管理職が調査部門で絶対権力をもっており、「調査員でなければ帝国の社員であらず」のような雰囲気がある。レポート力はあまり求められていない。

▮ 止まらない人材流出


厳格なノルマ設定と徹底した営業指導、平日のサービス残業、土・日の持ち帰り残業(家庭でこっそり仕事)などの影響で、人材流出がとまらない。このような中、ベテラン・中堅社員にとどまらず、新入社員も中途社員も早い人では入社数カ月から1年程度で見切りをつけ、退職していく。なお、退職者が増加すれば、その分の仕事を既存社員がカバーせねばならないが、生き残った者への更なる業務負荷の増加が、新たな退職者を生むという循環に陥っている。このマイナスのスパイラルがここ数年続いており、5年前(2010年)と比べて、社員数(シニア社員含む)は200名以上も減少している。その証拠に、どの支店でも調査員(という名の営業マン)の募集が年中かけられており、就職難易度は極めて低い状態になっている。人材の長期育成の概念は一切ない。

▮ 中途採用者の扱い


新卒組と中途組の垣根は高くなく、キャリア採用組でも営業成績を上げる事が出来れば、支店長等まで出世することは可能。ただし、転職組は最後まで調査営業の「現場」となるところが最大の違い。新卒組の場合もジョブローテーションの過程で、調査部門を経験することはあるが、そこで成績が上がらなくても、内勤に戻る選択肢が残されている。これが中途の場合は、現場でノルマが達成できない、成績を残せない場合は「退職」の二文字しかない。その待遇の差は、過去からの課題ではあるものの、本部機能を新卒組が握っているため、改善が進んでいない。新卒の離職率は3年で30%弱と高い水準だが、中途の調査員に至っては3年で80%近くが離職している。

▮ 同族企業


未上場のオーナー企業(同族会社)である。オーナーである後藤一族は絶対的な存在で、オーナー利益を確保するために働いてる感じはヒシヒシと感じられる。特に外勤においては、後藤一族に印税が入る年鑑の営業を理不尽に行わされる。その一方で、社長に気に入られたら昇進、評価を得やすい環境。社歴100年以上を経ても、現社長の後藤信夫氏で4代目という後藤一族色は未だに強く、一族への配当などを優先に据えた閉鎖的な文化がある。

▮ 全国展開とローカルルール


日本全国に展開しており、各地域の調査対象となる事業会社数に応じて人員を配置している。組織体制は、支社、A級支店、B級支店、C級支店、サテライトの順に拠点規模が小さくなり、100名以上の働く支社から数名のみ勤務するサテライトまで規模は幅広い。支店ごとに文化が違い、ルールの統一性もいまいちである。ローカルルールが多く、各部署や支店はそこの所属長により大きく左右される。部下を思いやる部署もあれば、使い捨てのように扱う部署もあるのが事実。

東京と地方での格差は大きく、地方採用者の場合は、基本的に転勤を伴わないため、モチベーションが高まりにくい。一部、近隣地区での転勤等を実施しているが、うまくは機能していない。ビジネス上、人事交流がしにくい点がネックとなっている。2010年前後より、強制的な転居を伴う人事異動が始まり、東京採用の調査員が地方に出される事例が目立っている。地方転勤はいわゆる片道切符で、ほとんど戻れることはない。

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