帝国データバンクの未来

▮ 帝国データバンクの強み


国内最大級の企業情報データベース(全国約150万社)を有する点が帝国データバンクの強みであり利益の源泉である。このデータベースを利用した企業信用調査(与信調査)だけではなく、マーケティング、倒産情報やCOSMOS2などの分析データサービスやランキング情報も手掛けている。

100年以上の歴史を持ち、社名の認知度・ブランド力は高いことも強みの一つ。この知名度の高さは、質の高い人材(偏差値の高い大学卒業生)の採用にも役立っている。日本全国(一部提携により海外もカバー)の調査インフラとして大手企業の商習慣に組み込まれており、ちょっとやそっとではこの慣習は変わらない。また、競合他社の数も限定されている。

信用調査会社としてはダントツの国内最大手であり、2位の東京商工リサーチと売上高・シェアベースで2倍近い差がある。そのため、中小企業の中には帝国評点を気にする経営者が多く、それに付け込んだ「お願い営業」が行いやすい。帝国データバンクの評点を上げたいが為に、帝国社員に接待をする会社すらもある。


帝国データバンクの未来

▮ ビジネスモデルの弱み


日本経済の発展・衰退と比例する側面があり、企業数が減っていくと当然ながら企業調査のニーズが減る。また、企業業績が悪化すれば真っ先に削られてしまうサービスという脆弱な面がある。更に、近年のインターネットの発達、情報の氾濫により、帝国データバンクが提供する情報の価値、基幹事業である信用調査の社会的な必要性が薄れてきていることに加え、最近では新興企業が低価格でのサービス提供を開始しており、大型案件を取られてしまうケースが増えている。

このように変化が起こっているにも関わらず、上層部は業界ナンバーワンであることに胡座をかいており、新しいことに対するチャレンジやアイディアなどを軽視、現状にこだわる姿勢が強い。過酷な営業による調査報告書の劣化、止まらない人材流出、海外事業(信用調査、データベース、倒産動向)への進出の遅れ等、問題は山積み。所詮はデータサービスであり、AIに代表されるハイテク技術により、根幹を揺るがすようなサービス・テクノロジーが現れたら即死する可能性もある。


▮ これからの事業展望


商取引がなくならない限り、信用調査需要はなくならない。これまでの実績は申し分なく、日本経済に与えてきた影響は高いものがある。蓄積してきた信用情報から派生するサービスも多い。ただし、前述の通り、インターネットの発達、情報の氾濫により、企業情報の価値が昔と比べ縮小してきているため、データベースを活用した新しいサービスの開発は急務。また、東京商工リサーチと異なり、海外展開をほとんど行っていないため、海外需要の発掘と海外事業の推進が期待されている。

インターネットから様々な情報を手軽に入手できる昨今において、今後売上が大幅に伸びる要素は見当たらないが、利益率は非常に高く、売上高経常利益率はコンスタントに10%を超えており、財務内容は良好。信用調査の必要性やデータの必要性が急激に低下することはないため、現状維持に支障はない。市場シェアや利益率を踏まえると今後も安定的に存続していくと思われるが、社員の過労自殺や消費税転嫁対策特別措置法に違反など、社会的な評判はかつてない程に落ちており、悪評が拡大するようであれば、世間や取引企業から見切られることが懸念される。

今後、企業の情報開示姿勢は2極化し、情報開示に積極的な企業の信用情報はクラウドなどを活用した他社(新規参入組)のサービスが主流になっていくと思われる。その反面、同族企業のような情報開示に消極的な企業の調査では、細々と生き残っていくだろう。

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